2009 Fiscal Year Annual Research Report
西洋中世とイスラム世界の法概念の比較哲学的考察:トマス、アヴェロエス、ガザーリー
Project/Area Number |
20720001
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山本 芳久 Chiba University, 文学部, 准教授 (50375599)
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Keywords | 哲学 / 倫理学 / 宗教学 / 思想史 / イスラム学 / 法哲学 / トマス・アクィナス / イブン・ルシュド |
Research Abstract |
本研究の研究目的は、従来別々に研究されることの多かった西洋中世哲学とイスラーム哲学を同じ土俵に載せて研究することによって、思想史研究における空白部分を埋め、法の哲学的根拠付けという哲学の根本問題の一つに比較哲学的観点から取り組み、そのことを通して、西洋文明とイスラーム文明の対話の可能性を新たな仕方で見出すための基礎的な研究を遂行することである。 平成21年度は、主に、ガザ-リー研究(『哲学者の矛盾』の綿密な読解)を行なった。ガザーリーの哲学者批判の書物である『哲学者の矛盾』は、イブン・ルシュド『矛盾の矛盾』によって反批判されたものであり、イスラーム世界における哲学的理性の位置づけを複眼的な視点で理解するためには、これら二つの著作を比較考察することが極めて有効である。それゆえ、平成20年度のイブン・ルシュド研究(『決定的論考』・『矛盾の矛盾』の綿密な読解)に引き続き、平成21年度は、ガザーリー研究に取り組んだ次第である。 ガザーリーに関しては、哲学を完全に否定したという解釈から、彼の哲学批判は哲学を知り尽くしたうえでの哲学的批判であるという解釈(中村廣治郎『ガザーリー研究』2002年)まで、多様な解釈が存在しているが、それらの解釈を批判的に検討した。また、イブン・ルシュドはガザーリーの哲学批判の反批判に最終的に成功することはできなかったので、以後イスラーム世界では哲学は衰退するという通説に対して、現代を代表するイスラーム哲学の研究者であるDimitri Gutasは、"The Study of Arabic Philosophy in the Twentieth Century,"という論文で辛らつな批判を展開し、その後、研究者の間で活発な議論が行なわれているので、それらの議論を批判的に検討しつつ、考察を展開した。 また、これらの研究を進めるうえで、英国、ドイツ、トルコ在住の研究者との交流・東儀の中で、豊かな刺激を得た。
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Research Products
(3 results)