2010 Fiscal Year Annual Research Report
西洋中世とイスラム世界の法概念の比較哲学的考察:トマス、アヴェロエス、ガザーリー
Project/Area Number |
20720001
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山本 芳久 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (50375599)
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Keywords | 比較哲学 / 倫理学 / 法哲学 / トマス・アクィナス / アヴェロエス / 宗教学 / 自然法 / シャリーア |
Research Abstract |
本研究の目的は、従来別々に研究されることの多かった西洋中世哲学とイスラーム哲学を同じ土俵に乗せて研究することによって、以下のような研究成果を得ることである。(1)思想史研究における空白部分を埋め、古代ギリシア哲学からイスラーム世界を経てラテン・キリスト教世界に至る哲学史の根本的な書き換えを行なう。(2)法の哲学的根拠づけという哲学の根本問題の一つに関して、比較哲学的観点から取り組む。(3)共通の地平の中で文明を形成していたとも言える「中世哲学」の時代に着目することによって、キリスト教文明とイスラーム文明との連続性と非連続性の詳細を明らかにする。 このような全体的構想の中で、平成22年度は、主に、アヴェロエスの『決定的論考』についての綿密な読解と論文執筆に取り組み、その成果を、「アヴェロエス『決定的論考』における「法」と「哲学」の調和」(『国際社会科学』第60輯、21-38頁)という論文にまとめた。この論文は、平成22年度のみではなく、三年間の研究全体の総括とも言える論文であり、一年目(平成20年度)のアヴェロエス研究と、二年目(平成21年度)のガザーリー研究(ガザーリーによる哲学批判についての研究)を踏まえたうえで、アヴェロエスが、ガザーリーによる哲学批判をどのように反批判したのかという見地から、アヴェロエスの法思想についての体系的考察を、ラテン世界の法思想との比較思想的考察という観点を含め、展開したものである。 西洋中世哲学とイスラーム哲学との同時的研究による相乗効果の獲得を目指している本研究は、この論文において、その基本的な目的を達成したと言えるが、同時に、ユダヤ教の法概念との対比といった新たな課題も明らかになったので、今後は、そのようなより広い観点からの考察に取り組んでいく予定である。
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Research Products
(6 results)