2008 Fiscal Year Annual Research Report
「物語る」映像メディアとしての「写し絵」に関する研究
Project/Area Number |
20720044
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
碓井 みちこ Waseda University, 演劇博物館, 助手 (00434358)
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Keywords | 映像 / 写し絵 / 幻燈 / 映画 / メディァ / 車人形 / 説経節 / 民俗芸能 |
Research Abstract |
本研究は、日本の芸能から題材や話芸・鳴物入りの上演形態を摂取することで西洋の幻燈とは異なる独自の発展を遂げ、のちの映画などに先駆け大きな影響力を持った「物語る]映像メディア「写し絵]を取り上げる。本年度は、早稲田大学演劇博物館(以下、演博)所蔵の写し絵を中心に、種板(スライド)の特徴と、説経節・車人形が種板の絵柄や仕掛けに及ぼした影響を、幻燈や映画の事例と比較しつつ、分析した。 まず種板の特徴を分析した。西洋の幻燈は、基本的に一台の幻燈機から投射される映像の枠内で動きや変化を作る。これに対し写し絵は、複数の風呂(幻燈機)にそれぞれ登場人物や書割背景を割り当て、それらの映像をスクリーン上で一つに合成し動きや変化を出す。静止画の集まりによって登場人物の行動を表す種板、横長の一枚ガラスの種板(長絵)などには、スクリーン上での映像の合成のしやすさを重視したものが多く、そのような種板が写し絵の物語の内容/形式を大きく規定していることを明らかにした。次に、種板と説経節・車人形との比較を行った。説経節を地語りとする車人形の盛んだった八王子周辺で使用されていた演博所蔵の種板には、車人形の振りを参照した箇所が多数見受けられる。そしてそのような種板は、車人形の振りを取り込もうとすればするほど、スライド操作や映像の合成など写し絵ならではの特性が強く意識されたものになる。そのことを『景清牢破り』の種板を例に検討した。また写し絵は、動く映像をスクリーンに投影するメディアとして確かに映画を先取りするものの、映像の合成については映画と異なった特質を有することも指摘した。 以上の成果は、演博を会場とした企画展とその図録、並びに論文の形で公表された。また演博に加え、松江郷土館にて影人形(写し絵の別称)の調査、シネマネーク・フランセーズとアイリッシュ・フィルム・インスティテュートにて幻燈と初期映画の調査を行った。
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Research Products
(2 results)