2009 Fiscal Year Annual Research Report
「物語る」映像メディアとしての「写し絵」に関する研究
Project/Area Number |
20720044
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
碓井 みちこ Waseda University, 演劇博物館, 客員研究員 (00434358)
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Keywords | 映像 / 写し絵 / 幻燈 / 映画 / アニメーション / 説経節 / 車人形 / 浮世絵 |
Research Abstract |
本研究は日本における映画前史の映像メディアである「写し絵」を研究対象とし、初期の映像がすでにメディアとして強大な社会性と可能性とを有していたことを実証する。本年度は、写し絵と西欧の幻燈を比較し、また説経節・車人形が写し絵の物語や表現形式に与えた影響を考察するのに加え、写し絵と関連の深い浮世絵にも調査の手を広げた。浮世絵から写し絵の絵師に転向した人物(都川一葉)がいるなど両者の関係はある程度知られてきたが、これまで本格的に検討されたことがない。例えば浮世絵には子供の手遊び用に作られた玩具絵というジャンルがあり、この玩具絵に写し絵を扱ったものがある。写し絵の玩具絵は、種板(スライド)に見立てられた横長の絵を、丸い穴の空いた黒い紙(映写幕)の後ろに置いて左右に引くことにより絵を出し入れして遊ぶ。これはまさに写し絵の原理を紙上に再現したものであり、ここから写し絵が江戸後期の庶民の生活の中にかなり浸透した映像メディアであったことが窺える。さらに玩具絵のみならず、役者絵や名所絵にも着日すると、種板の絵柄が画面の一要素として組み込まれ、さらに語りのテクストも一部再現されている「江戸乃華名勝會」(1863)など、これまで写し絵との関係では言及されてこなかった浮世絵があることも分かった。これらの調査は、演劇博物館などの日本のアーカイヴ、及びAcademy Film Archiveなどのアメリカのアーカイヴで行った。また以上の調査をもとに、早稲田大学演劇博物館GCOE国際研究集会「映画におけるジャポニズムとオリエンタリズム」(2009年11月)、及びThe SCMS Los Angeles conference (2010年3月)において、写し絵の研究発表を行った。研究発表の成果は、2010年秋刊行予定の藤木秀朗編『日本映画史叢書第14巻観客へのアプローチ』(森話社)において論文として公表する予定である。
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Research Products
(2 results)