2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720051
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Research Institution | Tsurumi Junior College |
Principal Investigator |
大地 宏子 Tsurumi Junior College, 短期大学部・保育科, 講師 (80413160)
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Keywords | 宅孝二 / ジャズ / ソルフェージュ / 舞踊 / 映画音楽 |
Research Abstract |
1. 昨年度明らかになった宅孝二の親戚(孝二の弟の子息)より、伯父である孝二にまつわる話を取材し、宅が大学に入る頃のエッセーを綴った雑誌や写真を入手することが出来た。なお、宅に最も近い血筋にあたる一番下の弟がまだ存命であるが、病気療養中のため取材することが出来ない。 2. 宅の二度に渡るフランスでの留学生活を明らかにするため、彼が籍を置いていたエコール・ノルマル音楽院と、音楽院の資料を所蔵するマーラー資料館を中心に調査した。当資料館にはエコール・ノルマル音楽院の教育システムと教育法についてまとめた修士論文が所蔵されており、音楽雑誌Le Monde Musicalに掲載された1919年の創立時から1939年に至る音楽院の教授陣とその授業カリキュラム(集中講義等も含む)の広告などから同音楽院の教育システムの変遷が明らかにされている。宅孝二が1930年代に同音楽院でいかなる教授たちの音楽教育を受けていたかを推察する重要な資料であった。また、彼が個人的に師事していた音楽教育家のナディア・ブーランジェに関する書籍などから、宅がエッセーの中で語っていたブーランジェ女史の自宅で行われていた音楽レッスンの詳細を明らかにできた。 3. 宅孝二が手掛けた映画音楽のうち、高度経済成長期直前のサラリーマンを風刺した代表的な喜劇映画「満員電車」「誰よりも金を愛す」「恋愛騎士道」を検証した。いずれもシニカルな音楽表現が印象的だが、とりわけ「誰よりも金を愛す」では、1920年代に流行したミヨー風のジャズ・イディオムやメカニックなリズムに日本民謡のパロディーを組み合わせるなど、宅のブラックユーモアの感覚が炸裂している。こうしたジャズと邦楽を合わせた楽曲は、ジェノヴァの音楽コンクールで受賞したピアノ曲《ソナチネ》をはじめ、彼の楽曲の多くに見られる手法であり、幼少時代に体験した邦楽と晩年に傾倒していったジャズへの憧憬が、彼の創作活動の基底をなしていることがうかがえる。
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Research Products
(3 results)