2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720054
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三浦 一朗 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 助教 (70466514)
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Keywords | 国文学 / 思想史 / 日本史 / 歴史意識 / 読本 / 軍書 / 歴史叙述 |
Research Abstract |
史学史ないし史学思想史において従来空白期間として扱われてきた近世中期について、歴史観より外延を広げた歴史意識という概念に基づいて再検討し、そこにうかがえる歴史意識の諸相を明らかにするという本研究の目的を達成するべく、研究の初年度である平成20年度は、まず源平の争乱、南北朝の争乱などに関する読本、軍書など、資料の基礎調査と収集を行った。 またその成果の一部として、学術論文「「浅茅が宿」を読む一やつれはてた宮木の姿から一」が学術雑誌『日本文学』2008年12月号誌上に発表した。「浅茅が宿」については、秋成が『重編応仁記』や『鎌倉大草紙』などの軍書を詳細に読み込んだ上で利用していることが既に指摘されている。本論ではその指摘を踏まえ、戦争に翻弄された名もなき人々がどのように描かれてきたかという観点から軍記物語や軍書類と「浅茅が宿」とを対比し、本編に伺える歴史に対する興味関心のあり方を論じた。結論として「浅茅が宿」は、軍書類の断片的な記述から(あるいはそれがなくとも)思いを馳せることのできる、しかし記録には殆ど何も残らなかった名もなき人々に戦乱がもたらしたものについて、ありえた歴史の一齣を描き出した作品と位置づけられる。そうした歴史や記録に残らない庶民の過酷な生に目を向けようとするところに、本編からうかがえる歴史意識の特徴を指摘できるだろう。そうした過酷な状況を生きた過去の人間の姿に対する興味関心は、「浅茅が宿」を含む『雨月物語』に限らず、近世中期の読本や軍書に幅広く見出されるものではないか。それが現時点の私の見通しである。
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Research Products
(1 results)