2009 Fiscal Year Annual Research Report
戦前期日本を中心とする〈サラリーマン〉の表象研究:日本モダニズム論再考
Project/Area Number |
20720064
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鈴木 貴宇 Waseda University, オープン教育センター, 助教 (70454121)
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Keywords | 日本文学 / サラリーマン / 文化研究 / 日本モダニズム / 近現代文学 |
Research Abstract |
本研究は、日本社会の最大構成要員である〈サラリーマン〉の表象過程とその成立を明らかにするものである。用語としてのサラリーマンが浸透する過程は、日本社会の資本主義化、都市化現象と並行しており、可視化された階層および日常語として定着する時期は1923(大正12)年、関東大震災後のことであった。大衆的な浸透と定着を見るのは戦後の高度成長期を待たねばならないが、本研究では〈サラリーマン〉の歴史的変遷に注目することで、日本社会の近代化と足並みを揃えて増加していった〈サラリーマン〉が、やがては「あり得べき中流」の水準として像を結ぶ過程の抽出を試みた。文献調査と資料分析を中心に行い、今年度の前半は引き続き文献調査の深化を試みた。サラリーマン層を構成した初期の階層が明治維新の動乱期に登場した「没落士族」に属していたことは、既出の研究で明らかにされているが、本研究はその社会的背景が文学作品および雑誌掲載の挿絵などに反映しているかを分析した。前者においては二葉亭四迷による初の言文一致小説「浮雲」にて中心人物となる内海文三の形象に、後者においては風刺新聞「団々珍聞」を具体例とすることができる。両者とも「教養」および「洋装」を〈サラリーマン〉の特性と感受しており、それがやがては「教養あるインテリ」の通俗的表象として昭和初頭に明確化すると考えられる。本年度の後半では、戦前の都市大衆文化爛熟期に成立した〈サラリーマン〉のイメージが、敗戦を経てどのように変化を遂げたのか、また戦前にあっては社会構成上の希少性から付随していた、〈サラリーマン〉への憧憬意識は連続し得たのか、を明らかにするため、占領期の雑誌資料を豊富に蔵するアメリカ合衆国メリーランド州立大学図書館プランゲ文庫にて調査を行った。研究期間は終了するが、研究論文として成果を出すべく引き続き研究を行っていく。
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Research Products
(3 results)