2010 Fiscal Year Annual Research Report
西鶴と団水を中心とする、浮世草子と俳諧に関する総合的研究
Project/Area Number |
20720066
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
水谷 隆之 佛教大学, 文学部, 講師 (60454500)
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Keywords | 日本文学 / 浮世草子 / 俳諧 / 井原西鶴 / 北条団水 |
Research Abstract |
昨年度までの調査結果をふまえ、以下を発表した。 「団水の好色物-『色道大皷』巻三の一・五の一を例に-」(『西鶴と浮世草子研究』4号、2010年11月)では、教訓臭が強く、西鶴作の切り接ぎで文学的形象も不十分との否定的評価が先行してきた団水の好色物浮世草子『色道大皷』(貞享4年刊)について再検討し、団水は『源氏物語』『伊勢物語』等の古注釈書が示す寓言説を念頭に置き、一定の構成意識のもとで各種典拠を利用していること、好色を滑稽に描きつつ教訓を示すことに主眼を置いており、『好色破邪顕正』(団水作、貞享4年刊)における好色本批判との間に齟齬がないことを確認した。また、その他の好色物浮世草子ならびに遊女評判記に関する調査結果をもとに、西鶴作浮世草子の再分析を行った。遊女に関する西鶴の情報の精度について検証した「『西鶴置土産』の山本の小主水について」(『日本古書通信』972号、2010年7月、のち『西鶴と浮世草子研究』4号、2010年11月に加筆再録)はその研究成果の一部である。なお、遊女評判記の研究成果を『江戸吉原叢刊』第3巻・第4巻(八木書店、2010年8月・2011年3月)にも反映した。 俳諧については、『俳諧団袋』(元禄4年刊)所収「濁江の」の巻に語釈・解釈を施し、「『団袋』所収西鶴・団水両吟半歌仙注釈稿」(『京都語文』17号、2010年11月)として発表した。元禄当時の西鶴・団水の連句作法の特徴および元禄俳諧との接点を具体的に示したものである。 以上、当初の研究計画に基づき、西鶴と団水の浮世草子、俳諧およびその周辺分野に関する研究を行い、一定の成果を得た。ただし、未だ十分には研究成果をまとめきれておらず、その公表は断片的なものにとどまっている。『色道大皷』と他の好色物浮世草子との関係、元禄期の西鶴・団水の連句注釈、西鶴作浮世草子と遊女評判記との関係等についても、追って発表する予定である。
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