2009 Fiscal Year Annual Research Report
古典演劇が語った「歴史」観についての研究-中世・近世の軍記物演劇-
Project/Area Number |
20720068
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Research Institution | Ube National College of Technology |
Principal Investigator |
岩城 賢太郎 Ube National College of Technology, 一般科, 講師 (40442511)
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Keywords | 演劇 / 古典芸能 / 歴史 / 軍記 / 能 / 浄瑠璃 / 平家物語 / 源平盛衰記 |
Research Abstract |
近世期の諸階層の人々にとっての、源平合戦に関する「歴史」を考えた場合、体制の近くに成った『日本王代一覽』等の歴史関連資料に見える、源平合戦期の武者に関する件り以上に、軍記物語や演劇作品を介して受容され、人々の中形成された「歴史」の影響は多大なものであろう。 如上の立場から、研究実施計画に従い、本年度は以下の2点ついて進めた。 1、 「斎藤実盛」関連作品の資料収集と分析 『源平盛衰記』の木曾義仲出生話に見える、斎藤実盛と木曾義仲との擬似的な父子関係に触れる件り注目し、斎藤実盛について記載のある、近世中・後期の諸資料との比較・検討を行った。すなわち、『平家物語』諸本に描かれる斎藤実盛関連話は、近世期には、『源平盛衰記』に見える木曾義仲と実盛の父子関係を踏まえて展開しており、そこに中世の期『実盛』に描かれた斎藤実盛像が加味され、近世前期の古浄瑠璃や近世後期の浄瑠璃の諸作品に取り上げられるに至っている。斎藤実盛は、近世後期の草双紙『実盛一代記』や浮世草子『実盛曲輪錦』等、軍記・演劇以外のジャンルにおいても作品化されているが『平家物語』において、断片的な活躍が描かれるにとどまっていた斎藤実盛が、近世後期に、その名を冠して、諸ジャンルの作品で注目されるには、『源平盛衰記』義仲出生話と能『実盛』、及び両者を受容した上で成立している浄瑠璃作品の多大な影響があった。 以上を西日本地区の研究会で発表し、目下、調査を補いつつ、論文化を進めている。 2. 中国・四国・九州地方に蔵される軍記物演劇資料の調査 山口県立図書館、山口大学図書館等の機関において、資料の閲覧を行った。演劇資料については。本年度の研究成果に、直接、関わる資料を見出すことは出来なかったが、近世~近・現代期に出版された『平家物語』梗概書である、『平家物語評判秘伝抄』『源平軍物語』等の資料の閲覧、マイクロ資料の複写等を行った。
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