2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720069
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
小澤 自然 Kansai University, 文学部, 准教授 (40361406)
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Keywords | ポストコロニアル文学 / V・S・ナイポール / 『ミゲル・ストリート』 / 英語圏カリブ海文学 / 国際情報交換 / イギリス |
Research Abstract |
本研究の目的は、カリブ海トリニダード・トバゴ出身のインド人系作家V・S・チイボールが、活動初期にあたる1950年代、60年代に発表した一連の作品を、「距離」と「場所」をキーワードとして分析・考察することである。 当初の研究計画では、今年度は、ナイポールの実質的処女作に当たるMiguel Street(1959)の分析を中心とした研究活動を行なう予定であった。この作品を執筆した当時ナイポールは、イギリスのBBCラジオの伝説的な文芸番組Caribbean Voicesの編集に携わったことが明らかになっているが、そもそもこの番組がどのようなものだったのか、そこでナイポールが具体的にどのような役割を果たしていたのかについてはそれほど詳らかではないことが、春季の研究の過程で判明した。そこで、夏季にはイギリスにあるBBCのアーカイブに足を運び、この番組のスクリプトのコピーを入手し、年度の後半ではその分析を行なった。 その過程でわかってきたのは、初期のナイポールは、当時勃興しつつあったカリブ海地域の文芸運動のかなり中心に位置していたということであった。このことは、ナイポール自身がひとたび作家としての不動の地位を確立すると、同時代のカリブ海出身の作家たちの手になる作品を厳しく批判するようになるため、これまであまり着目されてこなかった点である。 現在は(当初の研究計画より遅れているものの)、このような文化的状況を考慮に入れたときに、彼の作家としての出発点にあるMiguel Streetがどのように見えてくるのかを検討しているところである。また、成果を今年度中に発表するべく、現在ある国際学会の研究発表に応募中である。
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