2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720069
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
小澤 自然 関西大学, 文学部, 准教授 (40361406)
|
Keywords | 英語圏文学 / V.S.Naipaul / The Middle Passage |
Research Abstract |
本研究の最終年度に当たる平成22年度は、前年度までの研究成果を受け、V・S・Naipaulが1962年に発表したThe Middle Passage(1962)についての分析を行なった。The Middle Passageは、この作家の初期の代表作A House for Mr. Biswas(1961)の後に発表された旅行記で、彼の中期の文学活動の幕開けを告げる作品だと一般的には評価されている。彼の初期の作品がポストコロニアル的な枠組みに典型的に当てはまる作品だとすれば、この旅行記は、西洋的な価値観を基準として、宗主国からの独立を控えていたカリブ海諸国の文化的混乱を批判したものとして論争を呼んできた。本年度は、いまなおNaipaulの評価を二分する原因となっているこうした従来の読解がどこまで妥当なものなのかを、自分なりに再検討した。また、新たな段階の文学活動を創始するにあたって、旅行記という自伝的な要素を強く持つジャンルの文学をNaipaulがいかに利用したのかということについて考察した。 研究に際しては、Naipaulが作品中で言及しているヴィクトリア朝期イギリス人の旅行記のカリブ海地域の表象と、Naipaul自身のカリブ海への眼差しの関係に特に着目し、夏季にイギリスに三週間程度渡航し、British Libraryにてこの点についての調査・考察を集中的に行なった。この結果を受け、帰国後に学会発表用の論文を英語で執筆、9月下旬にアメリカのサウスカロライナ大学で行なわれた、The International Society for Travel Writing主催の学会"Traveling South"にて発表を行なった。なお、この研究については再考の余地が多々残されており、この学会で得たフィードバックを踏まえて論文をリバイズし、今後もう一度どこかの学会で発表したいと考えている。
|