2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720073
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山城 新 University of the Ryukyus, 法文学部, 准教授 (80363654)
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Keywords | 海の文学 / 環境文学 / エコクリティシズム / 20世紀アメリカ文学 |
Research Abstract |
本研究年度の調査課題として、まず、20世紀を代表する思想や理論枠組み内で海環境あるいは陸環境の価値観や概念がどのように意識されていたか、あるいはどのように20世紀的文学研究の枠組みの中で、海環境をめぐる言説をどの様に布置できるかという点を課題とし、特に脱構築理論や精神分析学を中心に解読を進めた。その調査は現段階でまだ進行中であるが、それぞれ個別の思想や主義の具体的議論の中身や理論の有用性よりも、20世紀中にモダニズムからポストモダニズムへ移行する中で、それまでの大陸法を中心とした社会や政治環境の認識的枠組みが脱構築されたり、あるいはポストコロニアリズムのような別の思考的位相へと転覆されたりする思想変革の過程は、海環境的価値観の変化とも相関している可能性があるように思われた。そして、同時に、今年度の研究発表も、この点において論考したものが中心となった。具体的研究成果について以下のとおりである。淡江大学におけるワークショップ"Eco-Philosophy and Future Direction for Ecocriticism"(7月15日-17日)に招待され、"The Land and Sea Interactions in Ecocriticism"を口頭発表した。北京大学における国際シンポジウム"Ecological Literature and Environmental Education"(8月14日-20日)に招待され、"New Directions in Ecociriticmin Asian Environmental Literature'を口頭発表した。それぞれ、アジアから発信するこれからの環境文学研究の可能性について海の文学の持つ意義を具体的作品分析をとおして論じた。すなわち、伝統的アメリカ文化・文学論において海環境の状況が考慮に入れられてこなかったことをいくつかの作品をとおして例証し、実はその思考的枠組みを踏襲しているアジアの欧米文化研究も同様に海環境を無視してしまっている状況を説明し、これからの環境文学研究は海という視点を意識することによって、欧米中心の文化論や文学論を再検討できるだけでなく、新たにアジア的な文学論・文化論の展開される可能性もあることを主張した。
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Research Products
(2 results)