2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720073
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山城 新 琉球大学, 法文学部, 准教授 (80363654)
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Keywords | 海の文学 / 環境文学 / 20世紀アメリカ文学 |
Research Abstract |
最終年度として、本年度の課題はこれまでの研究結果を総括することが中心になった。特に、20世紀思潮の中で陸環境と海環境の関係性についての言説をどのように説明できるかという点を中心として研究を進めた。今回の研究をとおして、海をめぐるアメリカの近代の受容は次のようにまとめることができる。19-20世紀アメリカ社会では、技術の発展や経済基盤の変化が急速に進み、人々の海環境への関わり方も多様化し、そして「大衆化」した時代であった。結果としてこの時代に多様な海の文学が生まれていくことになり、その中には従来の一般的アメリカ文学・文化理解に再検討を迫る作品例や文化的現象が多くみられた。 たとえば、19世紀にハワイ伝統文化として西洋に発見されたサーフィンは、ハワイの植民地化と同時に20世紀的文脈で非西洋的(非キリスト的)伝統文化として一度淘汰されてしまったようにみえたが、近代以後のアメリカ西部を起点としてカウンターカルチャーとして再生・再来し新たな展開を見せることになった。しかしながら、この現象は一方でビート世代が20世紀アメリカ西部のカウンターカルチャーの担い手として代名詞的に用いられることを考えると、カウンターカルチャーの内部でも、海をめぐる文化的諸活動(サーフ文化)が除外されながら、「路上」や陸地の価値観(ビート文化)が優位性を持つに至るというジオセントリズムの構造を見ることができる例としても考えられる。そもそも、ビート世代の芸術家たちが海を渡って異文化を体験しつつ、自らの表現を模索し続けたこと自体は、海域を介した体験として、海をめぐるトランスパシフィックな文化活動と関連付けられるはずである。このことは、単にビート世代の経験を支える文脈を海を含めて再配置すること必要性のみを含むのではない。海をめぐる価値観を踏まえ、我々は近代と近代以後の文化プロセスをどのように総括し、再考できるかを問題提起している。そして、アメリカの現代文化が、どのように近代とともにジオセントリズムを受け入れたかという大きな問題を射程に入れなければならないのである。
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Research Products
(3 results)