2009 Fiscal Year Annual Research Report
異文化コミュニケーションの史的研究-ヴィンチェンツォ・チマッティと日本語-
Project/Area Number |
20720143
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Research Institution | Salesian Polytechnic |
Principal Investigator |
村田 昌巳 Salesian Polytechnic, 一般教育科, 講師 (40390471)
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Keywords | 日本語教育 / 異文化コミュニケーション / 日本語学 / 言語学 |
Research Abstract |
1926(大正15)年に宣教師団を率いて来日したサレジオ会神父ヴィンチェンツォ・チマッティが、来日後どのように日本語の習得に取り組んだのかを明らかにするのが本研究の主目的である。 平成21年度は「チマッティ神父の外国語習得の過程とその結果に関する、異文化コミュニケーション史的分析及び記述」を計画の柱とした。チマッティ神父の日本語学習の方法・環境に関して、本人の自己分析及び周囲の人々の証言を記した文献から、下記の興味深い事実が判明した。1)文法訳読法を中心とした学習方法で、儀式における形式的発話はできるようになったが、日常における自由な会話は少しずつしか上達しなかった、2)言語習得の臨界期を既に過ぎているとの指摘を先学のフランス人宣教師から受けながらも、落胆せず日本語習得に挑んだ、3)母国語教育用である国語読本を学習に用いざるを得ず、授業形式の学習も不十分な内に打ち切らざるを得なかった、4)真摯に学習に取り組んだけれども、「日本語をマスターするまでにはいたらなかった」という第三者評価を受けるような成果に留った、5)布教に対する「志」という高いモチベーションが学習に作用してはいるが、自身の記憶力の衰退を嘆くといった、学習者に頻発しがちなフラストレーションも抱えていた。 また、関連する資料として、チマッティ神父とともに来日したピエトロ・ピアチェンツァ神父が編集に大きく貢献した「Appunti Di Grammatica Giapponese」(「日本語文法に関するノート」・1930年・Foglizzo/Canaveseにて印刷)の内容も精査した。しかしながら、「Appunti Di Grammatica Giapponese」では、ラテン文法書の形式を踏襲して日本語文法記述がなされており、鋭い洞察も一部に含まれてはいるものの、全体として高い水準に達していないことが判明した。
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Research Products
(2 results)