2010 Fiscal Year Annual Research Report
象徴天皇制の思想的基盤に関する研究-知識人による天皇制構想を中心として-
Project/Area Number |
20720169
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河西 秀哉 大阪産業大学, 教養部, 非常勤講師 (20402810)
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Keywords | 象徴天皇制 / 天皇制 / 天皇像 / 知識人 / 大正デモクラシー / 総力戦 / 現代化 / 戦後改革 |
Research Abstract |
2010年度は、象徴天皇制の思想史的基盤について、研究をまとめるための史料収集と分析を進めた。以下が成果である。(1)第一次世界大戦後の1910年代から、大正デモクラシー・総力戦体制・敗戦、そして高度経済成長までの天皇制・天皇像の連続性/非連続性について検討し、日本史研究会大会近現代史部会で報告した(準備報告は3回)。また、それを論文化し、『日本史研究』に掲載した。この論文は本研究の集大成としての意義を持つ。第一次世界大戦後の世界的君主制の危機を踏まえ、日本でも近代天皇制の再編に関する構想が提起された。大正デモクラシーの潮流を踏まえ、デモクラシーを主張する側からも、国体論を展開する側からも天皇制の再編が試みられたのである。昭和戦前期にももちろん断絶した部分はあるが、この構想が継続して展開された。戦争に国民一人一人が主体的に参画する総力戦体制下にあっては、天皇の下に国民それぞれは平等でなければならなかった。そのため、天皇との直接的な結びつきが強調されていく。そしてそれは、敗戦後の象徴天皇制へと繋がった部分もある。象徴天皇制は敗戦というインパクトによって形成された制度・構想であるが、それは、近現代を通しての大衆化・現代化といった問題への一貫した対応への結果だったと考える。(2)昨年度に引き続き、天皇制と帝国大学の関係性についての検討を行った。具体的には、京都大学文書館が所蔵している「皇室関係文書」を調査するとともに、当該期の新聞史料の収集を行った。この成果は、来年度以降に公表したい。(3)戦後天皇制に関しては、一般雑誌へ積極的な寄稿を行った。また、これに関する研究書の書評を執筆した(公表は来年度)。
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Research Products
(3 results)