2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720171
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
衣川 仁 The University of Tokushima, 徳島大学・大学院・ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (10363128)
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Keywords | 日本史 / 中世 / 仏教 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本中世の仏教がどのようにして社会的に展開していったのか、またその中で寺院・僧侶(集団)がどのような歴史的役割を果たしたのかを考察するものである。その際、延暦寺という権門寺院を中心に検討し、その中世化(寺院としての権力基盤の確立)の中で大きな功績をあげた慈恵大師良源の時代から始めて、その当時の社会状勢、特に承平・天慶の乱以降の"目に見える力"と"目に見えない力"との比重が増していく過程について、世俗社会も視野に入れつつ検討した。それによって、政治権力の側でもこうした"力"に対する需要が高まっていたこと、中世化という変質期にあって外部社会との良好な関係を模索していた寺院が"力"の需要の高まりを歓迎したことなどにより、都での"力"の比重が格段に高まっていった。 また、地方社会でもこうした"力"は必要とされていた。民衆の生活は環境に左右されやすい不安定なもので、自分たちではどうすることもできない要素が多分に組み込まれていた。それ故に祈りというものが必要とされ、その実効性が信じられていた。彼らは霊験という奇跡的な現象を起こし得る寺院・僧侶に帰依し、そこからの幸福を享受するようになる。逆に寺院は民衆を霊験によって繋ぎ止め、支配下に入れるようになっていく。 このような都鄙間に張り巡らされた仏教の網が、中世における仏教の社会的展開とそれによって獲得された歴史的位置の前提となっている。十世紀から十一世紀にかけて確立したこの関係が、院政期に入って更なる飛躍を遂げるという見通しを立てている。この部分に関しては、次年度の研究として継続していく予定である。
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Research Products
(1 results)