2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720171
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
衣川 仁 徳島大学, 大学院・ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (10363128)
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Keywords | 延暦寺 / 中世仏教 / 暴力 / 僧兵 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本中世における仏教の社会的な展開過程を跡づけ、その歴史的意義を日本史上に位置づけることにある。前年度までは、延暦寺・興福寺などの巨大寺院と、その権力を構成する僧侶集団=「大衆」の政治的行動や暴力についての史実を集め、その実態を明らかにしてきた。本年度は、こうした基礎的事実をもとにして、十世紀以降の延暦寺を中心とした「大衆」の動向をより詳細に検討した。寺院内部の自衛に端を発する寺院武力の起源の問題、それに拍車をかけた寺院内部の抗争事件、朝廷に対して敢行された強訴という示威的行為、こうした寺院の暴力と威力を社会的に波及させた宗教的存在(=「悪僧」・「神人」)が都鄙間を移動する問題など、中世寺院をめぐって展開する宗教と社会の関係についての問題として考察しようと試みた。 また、中世寺院の暴力は神仏という宗教的な後ろ盾によって支えられていたこと、その一方で神仏という存在は天皇・貴族から民衆に至るまでの現世利益の祈りに応じていたこと、この矛盾した中世宗教の在り方について、"宗教の時代"ともいわれる中世の歴史的特質につながる問題であるという自覚の下に検討した。具体的には、仏教の祈りが社会的に大きく期待されていたこと、その一方途であった密教修法をめぐる観念の問題について、十~十二世紀の事例で考察した。その中で祈りと暴力双方を支える神仏の威力が、延暦寺「大衆」たちによって強化され、社会的に定着していく様を明らかにした。その成果は『僧兵=祈りと暴力の力』としてまとめた。
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Research Products
(1 results)