2008 Fiscal Year Annual Research Report
ビザンツ帝国の教会・修道院改革についての体系的研究
Project/Area Number |
20720201
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
橋川 裕之 Waseda University, 高等研究所, 助教 (90468877)
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Keywords | ビザンティン帝国史 / 西洋中世史 / 中世教会史 / 総主教アタナシオス / 教会合同 |
Research Abstract |
本年度には、13世紀から14世紀にかけてビザンツ教会で進展した教会改革の特徴を把握するべく、その主要な担い手であるコンスタンティノープル総主教アタナシオス(在位1289-93年、1303-9年)の事績と、13世紀後半までに、アタナシオスを含む厳格主義的な修道士層に広く共有されるにいたった政治思想を集中的に検討した。 アタナシオスについては本年度、アタナシオス自身が1310年代半ばに、写字生の一人として自身の書簡集写本(ヴァティカン写本 ; Codex Vaticanus Graecus 2219)の制作に関与したこと、そして、彼が1297年より自身の手元に残し始めたオリジナル書簡の写しが、ヴァティカン写本の主要史料になっていたことを明らかにした。また、アタナシオスの周辺で発生したとされる奇跡をとりあげ、1289年における彼の最初の総主教就任と、14世紀半ばの公的な聖人認定に、その奇跡伝承が大きな役割を果たしていたことを指摘した。 13世紀後半に一部の修道士らに広まったのは、正教会とローマ教会の合同への反対意見を表明する際に、ラテン人(=カトリックの西欧人)を異端者であると公言することと、魂の身体に対する優越という、古代ギリシャ哲学に由来するレトリックを使用することである。本年度の研究では、形なきものを形あるものに優先する立場から、ラテン人を異端者と公言する行為が、1273年の首都の会議における高位聖職者ヨアニス・ベッコスの発言を端緒とし、その後、特定の文書を通じて合同反対派の修道士らに深甚な影響を及ぼしたこと、そして、その行為は1054年のいわゆる東西教会のシスマ以前の、両教会の教義・慣習上の相違に源を発していたことを明らかにした。
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Research Products
(7 results)