2008 Fiscal Year Annual Research Report
アイヌ文化期における小氷期とその影響に関する基礎研究
Project/Area Number |
20720215
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Research Institution | History Museum of Hokkaido |
Principal Investigator |
添田 雄二 History Museum of Hokkaido, 学芸部, 研究員 (40300842)
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Keywords | 考古学 / 環境変動 / 地質学 / 小氷期 / 北海道 / アイヌ民族 |
Research Abstract |
本研究では、科学的手法で北海道における小氷期を把握し,次に,北海道の古文書を「小氷期との関連・影響性」という視点で調査し、その証拠を収集することが目的である。 平成20年度の野外調査は北海道東部や十勝地方の湖および沿岸低湿地周辺で堆積物を採取。また、珪藻遺骸分析での比較用に、湖周辺の河岸、湖岸、湖口、海岸域で現生珪藻を採取した。分析作業は、珪藻遺骸分析を実施。古文書は目的に合ったものを選定し、天候記述と関連記述を抽出・整理した。 以上の結果をとりまとめた結果,17世紀の北海道における自然界は,小氷期の影響で動植物が減少するなど厳しい環境下にあったことが初めて明らかとなり,人間社会では慢性的とも言える食糧・物資不足が度々起きていたと推定された.特に,1660年代は死者が出るほどの大雪が春に3回も記録され,1663(寛文3)年の有珠山噴火による日射量不足や冷夏等の影響も重なり,過酷な環境下において食糧・物資不足が深刻化していたと考えられる(なお、同様なことは千島列島においてもみられる可能性が判明した)。このことは,藩の財政基盤を北海道での独占的な交易から得ていた松前藩の財政難を引き起こし,アイヌ民族交易での収益拡大に迫られたと考えられる。このように小氷期は当時の北海道の人々にも影響を及ぼしたことが明らかにされてきたが、それに加え、1669(寛文9)年に起きたシャクシャインの戦いの遠因になった可能性も明らかとなった。 これらの成果は学会で発表し、さらに当学会へ投稿した。また、当館の印刷物にも執筆した。
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Research Products
(3 results)