2010 Fiscal Year Annual Research Report
地籍図・土地台帳を用いた自然災害による被災空間の復原と復興過程に関する研究
Project/Area Number |
20720232
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河角 直美 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (40449525)
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Keywords | 災害史 / 災害復旧 / 土地台帳 / 免租 / 近代 / 十勝泥流災害 / 琵琶湖水害 / 環境史 |
Research Abstract |
本研究の目的は、土地台帳に残された荒地免租の記録と地籍図とを照合し、(1)自然災害による被災空間を復原し、(2)その復興過程を明らかにすることである。これまで、水害はじめ地震津波の被災地について、土地台帳の免租記録による被災空間復原の可能性を検討してきた。今年度はさらに、火山噴火後の泥流による被災地についても調査を実施した。また引き続き、琵琶湖岸地域における水害被災地の特性を分析した。それらの成果は下記の通りである。 1. 1926(大正15)年に発生した十勝岳噴火とそれに伴い発生した泥流で被災した上富良野村の土地台帳には、この災害による荒地免租地が記録されていた。その地域を概観すると、先行研究による被災地域の復原と一致している場合が多かった。今後精細な調査を進めることで、被災空間の復原ならびに復旧期間の推測が可能であることがわかった。 2. 1896(明治29)年の琵琶湖大水害について、昨年度の湖西地域に対し、湖東地域として守山市今浜地区における免租地についても調査した。その結果、今浜地域でも免租地は一部であり、隣接する土地同士が必ずしも免租地となっていないことも判明した。それらの要因については、湖岸周辺の低地における人々の琵琶湖との関わり合い方の歴史が関係していると想定される。今浜やその隣の木浜地区では、洪水のような水位変化を利用して、様々な生業を営んでいたことが近年明らかにされつつある。そのような営みが、免租の対象とされなかった理由の一つと推察している。 3. 免租の記録には、水害とそれ以外の災害とで相違があることが判明してきた。それには、日本人の災害に対する考え方、日常的な環境との関わり方なども関係していると推察しており、本研究の成果をより学際的な環境史研究へ展開していきたいと考える。
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Research Products
(3 results)