2010 Fiscal Year Annual Research Report
異性装の特殊性と普遍性:インドのヒジュラとカナダのベルダーシュに関する調査研究
Project/Area Number |
20720243
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Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
國弘 暁子 群馬県立女子大学, 文学部・総合教養学科, 専任講師 (20434392)
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Keywords | 異性装 / 現世放棄 / 模倣 / ジェンダー |
Research Abstract |
装いにおける性規範の境界線を超えた異性装の比較研究という課題を設定し、「第三のジェンダー」カテゴリーで括られた人々を対象とする調査をインドとカナダの両国において実施してきた。平成21年度は、カナダ先住民の中でベルダーシュと名付けられた人々と初めて接触をもったが、先住民という社会的地位に加え、セクシュアル・マイノリティのひとつにも数えられるという、二重の差異化の作用によって、彼らはカナダの社会全体で見えにくい存在となっている現状に気づかされる。さらに装いにおいては、彼らは格別な衣装を纏うことを今日では行っておらず、同じく「第三のジェンダー」として括られるインドのヒジュラとの違いを大きく感じた。ヒジュラの方は、衣装によって己の異質性を誇示することに務めており、周囲の人々からもその存在は認知されている。ただしこの見解は、インド西部グジャラート州での調査結果から導き出したものであり、他地域で活動するヒジュラの状況把握も必要だと考え、平成22年度(7月31日~9月12日滞在)は、グジャラート州の他に南インドのタミルナード州、チェンナイ市を訪問した。チェンナイのヒジュラは、アラワニガルという通称で知られる。アラワニガルが運営するAssociation事務所兼住宅を訪れたところ、そこで偶然出会ったひとりの人物と交友関係を結ぶことになる。その人物に連れられてチェンナイ市内の高級店などを訪れる機会を得たが、その経験を通じて、売春業に従事するアラワニガルの経済的不安定さを知ると同時に、グジャラート州に本拠地をもつヒンドゥーの女神パフチャラーの存在が、南インドにおいてはトランスジェンダーのシンボルとしてアラワニガルの間で影響力をもたらしていることを知った。インド全土を視野に入れたパフチャラー女神信仰とその聖地についての考察が必要と考えている。
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Research Products
(6 results)