2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730046
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
飯島 暢 Kagawa University, 法学部, 准教授 (90380138)
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Keywords | 刑法学 / 基礎法学 |
Research Abstract |
研究目的は刑事制裁論の法哲学的な基礎付けである。そこで、2008年度は最近のドイツにおける応報刑論の再評価を参考にしながら、刑事制裁論の法哲学的な基礎付けを図るために、特に刑罰を規定する2つの大きなパラダイムである応報の観点と予防の観点の関係について集中的に研究を行なった。従来、応報刑論は否定的に捉えられてしまい、あくまでも予防の観点をベースにして刑罰、つまり刑事制裁を構想する見解が支配的なものとなっていた。しかし、最近のドイツではそのような予防の観点は刑法を通じた治安維持の観点と結び付いてしまい、むしろ人間の自律性、人権を抑圧する道具として刑法を捉えるものではないかとの反省がなされるようになっている。そこで、応報刑論の再評価、応報思想を積極的に主張したカントの法思想の再評価がなされるようになっている。この点に着目し、昨年度はカント刑罰論をカント法思想体系全体の中で再定位しながら、カントの刑罰論も予防の観点を一定の範囲で考慮するものであること、応報の観点はただ単に予防の観点を制限するだけではなく、応報の観点そのものにそもそも内在的な限界があることを明らかにし、それを論文にまとめた次第である。
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