2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730047
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 宜裕 Kyushu University, 大学院・法学研究院, 准教授 (70365005)
|
Keywords | 損害回復制度 / 私訴 / 付帯私訴 / 違法の統一性 / 法秩序の統一性 |
Research Abstract |
本研究の目的である、より被害者の利用しやすい損害回復制度を確立すべく、本年度は、昨年度に引き続き、フランスにおいて、無罪判決と民事賠償の両立可能性を肯定した新立法が学説・判例に及ぼす影響を精査した。Fauteの一元性をめぐる立法の動向を詳細に吟味していくと、無罪判決と民事賠償の両立可能性の問題は、刑法上のfaute概念の変容と密接に関係していることが明らかになった。今時の新立法には、被害者保護のみならず、公的決定者の刑事責任からの解放を意図するものも多く見られる。無罪判決と民事賠償の両立可能性を追求することで被害者保護を図ろうとする場合、このことは、氏法上のfauteと刑法上のfauteの性質の違い、程度の違いを強調する方向に働く。他方の公的決定者の刑事責任からの解放という要請は、公的決定者を単純過失(faute simple)から解放する方向に作用する。これら二つの点から、刑法上のfaute概念は変容を迫られることなった。現在、フランス刑法には、従来のfautle概念の他、faute caracteriseeやfaute quailfieeといった概念が登場している。これらのfaute概念が単純過失より程度の高いものであるという点については、学説・判例に一致が見られるところであるが、これらの概念の詳細な中味については議論のあるところである。この点については、本研究課題と密接に関連するところであり、今後の動向を注意深く見守っていく必要がある。 また、無罪判決と民事賠償の両立可能性という問題が一連の被害者保護立法の文脈において提起されたことに鑑みれば、被害者保護の問題は、当然のことながら、損害回復制度のみで図られるものではなく、犯罪被害者保護の全体枠組の中で、との制度をどのように位置づけるかという視点ががきわめて重要であることが再確認された。
|
Research Products
(4 results)