2009 Fiscal Year Annual Research Report
上場会社における取締役等の民事責任制度の機能とそのあり方に関する研究
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20730079
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
和田 宗久 Kanagawa University, 法学部, 准教授 (60366987)
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Keywords | 会社法 / 金融商品取引法 / 取締役 / 役員 / 民事責任 / コーポレート・ガバナンス / イギリス法 |
Research Abstract |
本年度(平成21年度)は、会社法や金融商品取引法における民事責任制度を考えていくうえで、会社自身が株主ないし投資家に対して民事責任を負いうる場合について検討を行っていくことが、特に重要であるとの考えにいたり、主にそうした観点から研究を行った。その理由は、上場会社において不実開示その他の不正行為が行われた場合、株主等に生じた損害の填補という観点からは、会社そのものに損害賠償責任を負わせた方が、取締役等に損害賠償責任を認めた場合と比較して、損害填補の実現可能性が高くなると考えられる一方で、そうしたことを安易に認めてしまうと、会社に多額のキャッシュの流出を強いることにもなりかねないことから、債権者その他の利害関係の利益を大きく害してしまう可能性が出てくるからである。 本研究では、こうした観点から、そもそも株主がその地位に起因して会社自身から損害賠償を受けうる立場にあるか、という問題について従来の学説や近時の会社に対する不実開示責任の追及事例などをもとに検討を行った。 また、前年度から引き続き、発行会社の不実開示責任に関する議論の蓄積がみられるイギリス法について、情報収集・分析を行った。特に、イギリス出張時においては、イギリス財務省からの委託により、発行会社の民事責任にかかる制定法上の制度のあり方について検討を行ったオックスフォード大学Paul L.Davies教授などから詳細なヒアリングを行うことができ、この問題に関する現在のイギリス法の状況や今後の展望などについて有益な情報を得ることができた。 次年度においては、本年度に行うた調査・分析等等をベースに、この問題にかかる今後の法制度のあり方について一定の展望や方向性を導き出していきたいと考えている。
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