2009 Fiscal Year Annual Research Report
「公私」観念についての思想史的考察――18世紀スコットランド啓蒙哲学を中心として
Project/Area Number |
20730089
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
一ノ瀬 佳也 Chiba University, 大学院・人文社会科学研究科, 特任教員 (20422272)
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Keywords | 道徳哲学 / 市場と国家 / 公共性 |
Research Abstract |
本研究は、17世紀の社会契約論と比較しながら、18世紀スコットランド啓蒙哲学における「公私」観念の特徴を明らかにするものである。一般的に、18世紀の商業社会の成立は、共同体から解放された利己的な個人の成立に特徴づけられてきた。しかし、その商業社会を論じたスコットランド啓蒙論者たちにおいては、17世紀の社会契約論のように個人を他者から遊離した利己的な存在としてのみ捉えていたのではない。むしろ、交換を通じて他者と関わり合い、一定の道徳的心性を有するようになると論じていたのである。彼らの道徳哲学には、他者との「共感」によって正義のルールを導出できることを明らかにしたところに特徴がある。 本年度は、11月から2月までグラスゴー大学アダム・スミス・リサーチ・ファンデーションの客員研究員を務めた。ヒューム研究において世界的に有名であるグラスゴー大学のクリストファー・ベリー教授と度々議論し、ディビット・ヒュームの「道徳哲学」についての研究を行った。グラスゴー大学で行われている講義にも参加し、イギリス思想史についての知見を深めることができた。この研究成果を、千葉大学の「社会・政治思想研究会」と「公共哲学研究会」の双方において発表した。 また、コミュニティを基盤とする公共哲学としての論文「市場と共同体--シティズンシップの政治経済論」が、広井良典・小林正弥編著『コミュニティ』(勁草書房、2010年)に収録されて出版された。
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Research Products
(2 results)