2009 Fiscal Year Annual Research Report
後期サラマンカ学派の政治理論―カトリック的近代国家論の体系化
Project/Area Number |
20730101
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
松森 奈津子 University of Shizuoka, 国際関係学部, 講師 (80337873)
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Keywords | サラマンカ / スアレス / スコラ / 初期近代 / 政治思想 / スペイン / カトリック / 主権国家 |
Research Abstract |
本研究は、他のヨーロッパ諸国で興隆した同時代の国家理性論や社会契約説と比べて注目されることの少ない後期サラマンカ学派(c.1576-c.1615、メディナからスワレス)の権力・国家論に着目し、それが近代主権国家秩序の形成に与えた影響を検討するものである。本年度は、翌22年度とともに、この目的に沿って本研究課題をまとめる執筆期間と位置づけられている。すなわち、20年度に調査したラテン語、カスティリャ語原典に基づき、後期サラマンカ学派の世俗権力観をめぐる分析を行い、その理論展開の過程を明らかにした。 具体的には、前年度から行っていた作業、つまり後期サラマンカ学派が多くを拠っている前期サラマンカ学派との理論的異同を明らかにする作業を完結し、別記の著書(単著一冊)、雑誌論文(単著一本)、口頭発表論文(単著二本)として公にした。とりわけ著書は、第31回サントリー学芸賞(思想・歴史部門)を受賞し、科学研究費補助金による研究成果が、一定の社会的評価を受けたものと考えられる。同時に、各思想家の主著を読み込むことによって、自然性と倫理性に礎をおく後期サラマンカ学派の世俗権力観の源泉と理論的特色を検討した。さらに、教育面でもその成果を還元すべく、通常の講義に加え、慶應義塾大学法学部特別招聘講師として、「グローバル化の光と影-16世紀スペインのインディアス問題を中心に」と題する講義を行った。 以上の作業により、後期サラマンカ学派の権力・国家論の特質が明らかになり、次年度の作業-西洋政治思想史におけるその意義の提示-の準備が整った。
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Research Products
(4 results)