2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本の公的医療の費用非効率性と公営企業会計の特殊性
Project/Area Number |
20730161
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
藤井 敦 The University of Kitakyushu, 経済学部, 准教授 (00326456)
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Keywords | 公営病院 / 効率性 / フロンティア分析 / 距離関数 |
Research Abstract |
独立採算原則がもたらす生産要素配分の非効率性を計量経済学的に分析するための出発点として,Rodriguez and Lovellの支出選好モデルを前提にした。このモデルは,意思決定主体(個々の病院)がその支出そのものから効用を得ると仮定するモデルであり,生産要素の投入が過剰である状況(技術的非効率性)と,費用最小化の面からみてバランスが悪い状況(配分非効率性)を同時に,かっ両者を識別して推定しようとするモデルである。このモデルを日本の公営病院の財務データに適用する場合の問題点は,短い時系列からなるパネルデータで観測されない個別効果を除去することである。これを解決するために,異なる役割を持たせた三つの確率変数からなる誤差項を想定した。2004年度から2006年度までのデータを用いて分析した結果,以下の点が判明した。(1)誤差項の三つの確率変数を二つに削除して意図的に従来型の推定作業を行うと,技術非効率性の推定値が大きく変動する。このことから,観測できない変数による影響が大きいことが分かる。従って本研究で提示した推定法が有効に機能していることがわかる。(2)生産要素の単純な冗長投入は技術非効率性として計測されると考えられるが,この推定値は不採算地区では6.5%であり,同種の分析の中では低い値である。従って医療サービスの質を落とさずにこの種の非効率性を除去するのは困難であるほどの水準と考えられ,問題はメディカルマンパワーと機械設備のバランスということになる。(3)配分非効率性の推定結果は看護職の過小投入と固定資産の過剰投入を示唆している。従って,バランスの悪さがあるとすればそれは固定資産の過剰であると推察される。
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