2008 Fiscal Year Annual Research Report
インフレ・ターゲティング下での金融政策行動に関する実証研究
Project/Area Number |
20730190
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
立花 実 Osaka Prefecture University, 経済学部, 准教授 (70405330)
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Keywords | 金融政策 / インフレ・ターゲティング / 政策反応関数 |
Research Abstract |
本研究は、インフレ・ターゲティング下での金融政策行動を実証的に明らかにすることを目的としている。この目的のもと、本年度は手始めとしてインフレ・ターゲティングの効果について再検証を行った。まず初めに、インフレ・ターゲティング導入国、導入期間、目標インフレ率、運営方法などを調査し、インフレ・ターゲティングの実情を把握した。次に、インフレ・ターゲティング導入国を含む75ヵ国のインフレ率やGDP成長率などのデータを収集した。その上で、インフレ・ターゲティングがマクロ経済にどのような影響を及ぼしたかについて検証した。実証分析を行った結果、インフレ・ターゲティングの導入は先進国では効果がなかったが、新興国・途上国では効果があったことが示された。インフレ・ターゲティングが先進国において有効でなかった理由の一つとして、先進国の中央銀行は擬似的にインフレ・ターゲティングを行っていた可能性が考えられる。この仮説を検証するためにも、各国の政策反応関数の推定・比較する必要性が確認された。なお、今回の実証結果を踏まえ、日本にインフレ・ターゲティングを導入すべきか否かについて検討したが、先進国の日本がインフレ・ターゲティングを導入しても、さほど経済は改善されないことが示唆される。しかし、低金利かつデフレ圧力の問題に直面している昨今の日本の経済状況を考えると、正常な経済状態の国・期間のデータを用いた今回の実証結果だけで判断するのは早計だと考えられる。日本におけるインフレ・ターゲティング導入の是非を検討するためには低金利かつデフレの時期のデータも加えた更なる検証が必要である。なお、今年度の研究成果は「インフレ・ターゲティングの検証-データは何を物語っているのか-」としてまとめ、『経済学・経営学・法学へのいざない(その2)』(大阪公立大学共同出版会)に所収予定である。
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