2009 Fiscal Year Annual Research Report
インフレ・ターゲティング下での金融政策行動に関する実証研究
Project/Area Number |
20730190
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
立花 実 Osaka Prefecture University, 経済学部, 准教授 (70405330)
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Keywords | 経済政策 / 金融政策 / インフレ・ターゲット / 政策反応関数 / 実証分析 |
Research Abstract |
本研究は、インフレ・ターゲティング下での金融政策行動を実証的に明らかにすることを目的としている。昨年度はインフレ・ターゲティングの効果を検証したが、今年度はインフレ・ターゲティング下で中央銀行がどのような金融政策運営を行っているか追求するために、オーストラリア・カナダ・イギリス・ニュージーランド・スウェーデンの5カ国について、各国の政策反応関数を推定した。これら5カ国を選択した理由は、比較的早期にインフレ・ターゲティングを導入しており、ある程度のサンプル数を確保できるからである。まず始めに、線形の政策反応関数を推定した。この分析では、各国ともインフレ率が高くなるほど、そしてGDPギャップが高くなるほど金融を引き締めるという結果が得られ、米国や日本などインフレ・ターゲティング非採用国の政策反応関数を推定した先行研究の結果とさほど変わりがないことが確認できた。次に、インフレ率が目標範囲内にある場合と範囲外にある場合で、インフレ率に対する反応が異なるか否かを検証するために、非線形の政策反応関数を推定した。結果は、スウェーデンを除いた4カ国で、インフレ率が目標範囲内にある場合は目標範囲外にある場合と比べ、インフレ率に対する反応が小さいことが分かった。しかし、インフレ率が目標範囲内にある場合のインフレ係数は4カ国とも負であり、かつGDPギャップの係数も負となるケースが一部の国で見られた。これは、推定に用いた単純な非線形モデルではインフレ・ターゲティング下での金融政策行動を十分に捉えきれていないことを示唆している。これを受けてさらに、インフレ・ターゲティング下での金融政策行動をより適切に描写できるモデルの探究に取りかかったが、現時点ではまだ決定的なモデルが見つかっていない。そこで平成22年度も引き続き、より望ましい非線形モデルを特定化することを最重要課題に置き、インフレ・ターゲティング下での金融政策行動を調査しいくつもりである。
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