2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730219
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
上村 敏之 Kwansei Gakuin University, 経済学部, 准教授 (00328642)
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Keywords | 公的年金 / 児童手当 / 租税支出 / 負の所得税 / 財政再建 / 社会保障 |
Research Abstract |
2008年度においては、11本の雑誌論文、2回の学会発表、2冊の図書が研究実績となった。11本の雑誌論文のうち、本研究課題と関係がある主なもののみ記述する。まず、「負の所得税の導入費用の推計」は、過去には盛んであったが、近年にはなされていなかった負の所得税の導入費用について推計を行った。最近になって、所得控除を税額控除に変更する政策提言が多くみられ、それを具体化する研究として意義がある。また、「所得税における租税支出の推計」および"An Estimation of Tax Expenditure in Japanese Income Tax"は、所得控除を税による「隠れた補助金」としてとらえ、その金額を租税支出として推計している。租税支出の推計は、わが国では初めての試みであり、政策的な重要性も高い。さらに、公的年金と児童手当の関連性について、2本の論文を発表した。特に、「公的年金の運営方法と児童手当の経済効果」では、保険料水準固定方式と給付水準固定方式の比較を行った。今年度の学会発表については、ひとつは児童手当の財源選択についての研究であり、もうひとつは移民政策と公的年金の関係をみたものである。移民と公的年金の関係には、いくつかの既存研究があるが、特に賃金格差を導入しなくても、家計の子どもに対する選好の異質性を考えることで、移民による所得格差を説明することができるとした。最後に、2冊の図書のうち、『検証格差拡大社会』では、様々な格差に焦点を当てて分析し論評を行っている。また、『公的年金と財源の経済学』は、これまでの公的年金に関わる研究の成果をもとにして、大部分を新たに執筆することでまとめられた。
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