2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730219
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
上村 敏之 関西学院大学, 経済学部, 教授 (00328642)
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Keywords | 公的年金 / 生活保護 / 個人住民税 / 地方法人課税 / 消費税 / 個別間接税 / 税制改革 / 所得税 |
Research Abstract |
2011年度においては、7件の雑誌論文(うち1件は図書の分担執筆、1件はディスカッションペーパー)が研究業績となった。そのうち、主なものについて記述する。第一に「間接税の所得階級別負担」では、消費税だけでなく、個別間接税についても、所得階級別の負担の状況を推計している。税収で比較すれば、消費税と個別間接税は同じ程度となっており、個別間接税の負担の状況について知ることが、消費税の今後を考える際に重要となる。結果として、個別間接税にも逆進性が存在することを指摘した。第二に「生活保護はなぜ増えてきたのか」では、長期的には高齢化の進展、中期的には経済低迷、短期的には震災の影響が、生活保護世帯の増加を促進していることを指摘した。特に若年者の生活保護世帯については、就業支援および職業訓練など特段の政策が必要だと強調している。第三に「公的年金と地域経済」では、従来は世代間所得再分配としてとらえられる公的年金を、地域間所得再分配としてとらえ、公的年金給付がもつ地域消費への影響を実証的に分析している。地域消費に対する影響は、他の所得に比べて、公的年金給付が大きく、特に高齢化が進む地域でその影響が大きい。すなわち公的年金給付の抑制は、地域経済に影響を与えるジレンマが存在する。第四に「社会保障・税一体改革の背景と行方」では、最近の社会保障・税一体改革の動きをフォローしつつ、特に将来世代と雇用への配慮が不可欠であることを指摘している。第五に「抜本的税制改革と地方税」では、特に個人住民税と地方法人課税に関して、地方公共サービスとの対応を重視する応益負担の立場から、制度設計のあり方を提案している。具体的には、公共部門の庇護を受けている市場へのアクセスや地域コミュニティに属する個人と法人には、一定の地方税の負担は当然であり、さらに個人または法人の活動に応じて負担を求めることが妥当である。結果的に、定額負担と定率負担を合わせた地方税体系が望ましいが、現状の地方税体系からは乖離している。その乖離を埋めるための抜本的な地方税改革案を提案している。第六に「所得税の税収構造の要因分析による実証分析」では、所得椌除の税収ロスと税率変更による増収額を試算した。
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