2009 Fiscal Year Annual Research Report
不登校の居場所づくりにみる現代のコミュニティ形成--シカゴ学派社会学からの接近
Project/Area Number |
20730330
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
高山 龍太郎 University of Toyama, 経済学部, 准教授 (00313586)
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Keywords | 不登校 / 居場所 / コミュニティ / シカゴ学派 / 社会的統合 / ひきこもり |
Research Abstract |
複数の不登校の居場所をフィールドワークした結果、居場所とは「人並みにならねば排除されるという世間の価値観から隔絶された空間であり、そこに十分な時間をかけて複数人で引きこもることによって、そうした価値観を相対化する場」と考えるに至った。ひきこもり現象は「人並みにできない自分」と「人並みにならねば排除されるという世間の価値観」のギャップ(アノミー)として理解できる。学校復帰・就労支援・医療などが「人並みになる」方向でギャップを解消する支援であるのに対し、居場所活動は「世間の価値観へのこだわりを捨てる」方向でギャップの解消を目指す。居場所活動の目標は、「うれしい・たのしい・おいしい」などの肯定的な感情を仲間と共有することによって、「仮に人並みになれなくても人生は楽しい」と思えるようになることである。こうして「勝ち組・負け組」のような二者択一の価値観がグレーゾーンを許容するものに相対化される。この相対化は、ある種のたくましさを身につけることである。このたくましさゆえに、居場所外の仕事場などで失敗しても、何とかやりすごせるようになる。この世間の価値観の相対化によるたくましさの獲得が、居場所卒業の目安であり、不登校支援の方法としての居場所の有効性である。以上の過程は、芹沢俊介の言う「正しい引きこもり」の往路・滞在期・帰路を居場所に集う皆で実践したものと言えよう。しかし、居場所に来る自信を失った子どもたちは皆と活動すること自体が難しい場合も多く、居場所スタッフは、子どもたちの心の揺れにつきあいながら、ゆっくりと丁寧に活動を作らねばならない。それには、子どものペースを尊重して「待つ」ことが常に求められる。問題点は、このような居場所活動が一般の人にはただの日常生活にしか映らないため、資金繰りを含めた居場所の経営がたいへん厳しく、一部の人たちの献身的な努力に支えられていることである。
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Research Products
(2 results)