2010 Fiscal Year Annual Research Report
サブカルチャー集団による地域社会への参加に関する民族誌的研究
Project/Area Number |
20730356
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
大山 昌彦 東京工科大学, メディア学部, 准教授 (40329173)
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Keywords | サブカルチャー集団 / 社会参加 / 地域社会 / 公共空間 / 文化関係資本 / 商店会 |
Research Abstract |
本研究の目的は、サブカルチャー集団の地域社会への参加の様態を、茨城県中央部で活動するロックンロールと呼ばれるサブカルチャー的活動を行う集団を対象に、活動場所の獲得そしてその維持に関 して地域社会との交渉を通じた社会参加へのプロセス、および活動を通じた下位文化的なネットワークの形成、そしてそれ以外の社会生活との関連を明らかにすることである。本研究では、主にフィールドワークを中心とした現地調査、および新聞・雑誌のテクスト分析を併用し、データの収集と分析を行うものである。 平成22年度は、茨城県中央部のロックンロール・チームへのフィールドワークおよび、チームがパフォーマンスを行う祭りの主催者および地元の商店関係者への聞き取り調査を行った。対象となる成人系のチームでは、従来と異なるサブカルチャーの伝達とメンバー参加の様態が明らかとなった。従来ロックンロールは、暴走族を中心とした地元の不良グループへの周辺から加入を契機とした同世代の集団内で伝達とれてきたが、成人系のチームにおいては、若年層の参加は、親子、またはそこから派生し子供の友人関係がその契機となっているため、家族関係がサブカルチャーの伝達において重要である点が浮かび上がった。また成人系のチームが増加し多様なスタイルのパフォーマンスが展開する現在では、メンバーの移動が活発になっている。過去、暴走族の義務であったロックンロールは、参加者のメンバーシップが限定、固定化されていた。現在ロックンロールは趣味と位置づけられるようになったために、自分の好みのスタイルとチームを各自が選択するようになり、チームとメンバーの関係はより流動化しつつあることが明らかになった。 また祭りの主催者である水戸市観光協会かよび商店会の聞き取り、ロックンロールに対する態度が柔軟化しつつも、内部では分裂していることが明らかになった。ロックンローラーと主催者は、パフォーマンスの際の取り決めにおける衝突の減少、共同で祭りのパトロールの実施など、協調関係を築きつつある。一方では地元の他者である暴走族時代のトラブルの記憶が強く残り、強固にロックンロールを拒否する商店会関係者も数多く存在するため、主催者側の内部調整が困難であることが明らかになった。
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