2008 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける医療圏と地域医療連携に関する歴史的研究
Project/Area Number |
20730384
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
白瀬 由美香 Doshisha University, 政策学部, 講師 (50454492)
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Keywords | 医療保障 / 医療提供体制 / 医療圏 / 地域医療連携 / イギリス / NHS / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究は、1948年の制度発足から現在に至るまでの間に、イギリスの医療保障制度NHSの下で医療圏や地域医療連携の様相はどのような変化を遂げてきたのかを解明しようとしている。まず本年度は、国内の図書館やデータベース、インターネット等を通じて入手可能な一次資料、二次資料の収集に重点を置いて研究を進めてきた。NHSにおける医療圏のあり方は、度重なる制度改革や組織変更の影響を受け、とりわけ1990年代以降はサービス供給に「準市場」が導入されたことから、地域医療連携の性質も大きく変化をしてきた。そこで、医療圏という概念を用いて、60年間にわたるNHSの変遷を振り返ることによって、地域の視点から見たNHS像を再構成しようと試みた。 そして、本研究費補助金によって9月に2週間、さらに同志社大学個人研究費によって3月に1週間の現地調査を実施した。国立公文書館、医学史図書館、バーミンガム市中央図書館等で史資料の収集をしたほか、イギリスの学会大会やセミナー等に出席し、現地研究者と現代史研究のアプローチ法や近年のNHS改革についての情報交換をした。また、ヘルスセンターや診療所などの一次医療機関の視察、NHSスタッフへのインタビューを行い、NHSの歴史的展開を踏まえた上で現在の地域医療連携の状況を理解することに努めた。以上から得られた成果の一部は、社会政策学会第117回大会で「イギリスにおける地域医療改革 : ポリクリニック構想の特徴と課題」として研究報告をした。 現在のところ、学会発表した論文の投稿準備と同時に、収集してきた史資料に基づいて1974年NHS改革による医療圏と地域医療連携の変化についての分析を進めているところである。イギリスにおいて医療政策への住民参加が始められたのも1974年のことであり、患者中心の医療を実現する地域連携を考えていくためにも、当時の改革にまつわる議論は、今後さらに精査していく必要がある。
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Research Products
(1 results)