2009 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける医療圏と地域医療連携に関する歴史的研究
Project/Area Number |
20730384
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Research Institution | National Institute of Population and Social Security Research |
Principal Investigator |
白瀬 由美香 National Institute of Population and Social Security Research, 社会保障応用分析研究部, 第4室研究員 (50454492)
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Keywords | 医療提供体制 / 地域医療計画 / 医療圏 / 連携 / 専門職 / NHS / イギリス / 国際情報交換 |
Research Abstract |
前年度から引き続き、1970年代以降のNational Health Service (NHS)の展開を中心に、医療圏と地域医療連携の歴史的変遷に関する史資料の収集を進めている。サービスの質向上、政策決定への住民参加の推進、患者による選択の尊重、健康格差の解消など、現在のNHSにおける重点課題を見据えて、できる限り仔細な考察をすることに努めた。2009年9月には現地調査を実施し、文書館等での一次資料の収集の他、研究者との意見交換、医療従事者・自治体関係者へのヒアリング等を行った。本年度の具体的な研究内容は主として以下の3点であった。 1. 1974年以降のNHS改革と住民参加制度の変遷:NHSの創設以降初めてなされた大規模な組織改編であった1974年改革では、地域保健協議会が設立され、政策決定への住民参加の萌芽が見られた。各地の地域保健協議会と保健省との間で交わされた文書等をもとに、医療制度に関する消費者主義的な施策の進展とその間の医療を取り巻く社会変化について検証作業を進めている。 2. プライマリケアの在り方を中心とした医療機関の機能分担の変化:インナーシティにおける医療提供体制の改善のため現在進められている改革について、昨年度から継続して検討している。特にロンドンで導入された「ポリクリニック」と呼ばれる新たな一次医療機関モデルについては、イギリスのプライマリケア発展の経緯に照らして、特徴と課題、波及可能性等に関して考察を行った。 3. 専門職への規制や職務範囲の変容が連携にもたらす影響:1990年代以降にめざましい拡大が見られた看護師の職務、とりわけ処方権の委譲に注目し、専門職の役割分担と連携の変化について検討した。その成果の一部は社会政策学会大会で報告後、査読誌に投稿し、現在審査中である。 こうした研究は、医療制度・政策史研究だけではなく、現代社会における公的部門の役割や専門職のありように関しても、新たな社会科学的な知見を引き出すことにつながると思われる。
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Research Products
(1 results)