2011 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける医療圏と地域医療連携に関する歴史的研究
Project/Area Number |
20730384
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Research Institution | National Institute of Population and Social Security Research |
Principal Investigator |
白瀬 由美香 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障応用分析研究部, 第4室研究員 (50454492)
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Keywords | 医療提供体制 / 地域医療計画 / 医療圏 / 連携 / 専門職 / NHS / イギリス / 国際情報交換 |
Research Abstract |
患者本位の医療を推進する施策が、昨今のイギリスでは重要視されていることから、平成23年度は医療制度・政策における患者・医療従事者の位置付けという観点から、医療圏と地域医療連携のありようがどのような変遷を遂げてきたのかに関して、現地調査および資料の分析を行った。その結果、福祉国家の基盤として発足したNHSがいかに社会変化に対応し、進化してきたのかについて、以下の論点を指摘することができた。 医療サービスの消費者としての患者の役割が強く意識されるようになったのは、政策決定過程への住民参加が始まった1974年のコミュニティ保健協議会の設置からであった。1991年には「患者憲章」が医療制度における患者の位置付けを明示し、2010年の「NHS憲章」でも患者の権利と義務が再確認された。とりわけ患者による選択の保障は近年の重要課題の一つであり、たとえば居住区域外の医療機関受診を可能にする改革がなされていた。また、退院後の継続ケア、精神保健、終末期ケアなどに対して導入された、Personal Health Budgets(個人医療予算制度)のパイロット事業は、従来の医療・介護制度の枠組みを超えた地域連携が可能となる試みであるように見受けられた。 他方、医療従事者の位置付けについては、NHSに準市場メカニズムが導入された1990年代以降、制度運営においてマネジメントの視点や予算管理が強調されるようになり、サービス提供における医師の絶対的な優位性は変化を余儀なくされていた。同時に、医師以外の医療従事者の間で職務内容の拡大や専門分化が進み、たとえば訓練を受けた看護師には診察や処方が認められるようにもなっていた。医師が依然とし.て患者への最終的な責任を負うことには変わりはないが、多様な医療従事者に患者・家族をも加えた医療チームとして、互いに協力し合い、サービス提供をしている姿が浮き彫りになった。
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Research Products
(4 results)