2010 Fiscal Year Annual Research Report
社会不安障害に対する認知行動療法の治療効果を高める技法の開発
Project/Area Number |
20730446
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
金井 嘉宏 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 助教 (60432689)
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Keywords | 臨床心理学 / 不安障害 / 社会不安障害 / 社交不安障害 / 対人不安 / 認知行動療法 |
Research Abstract |
本研究は,社会不安障害(SAD)に対する認知行動療法の治療効果を高めるために,主要な治療技法であるエクスポージャー(暴露法)を効果的に実施する方法の開発を目的としていた。不安の消去学習を行うときに腹内側前頭前野を賦活させることによって学習効果が持続することが示されている。本研究は腹内側前頭前野を高める方法として情動調整に注目し,情動調整が社会不安に及ぼす影響を調査によって検討するとともに,情動調整が腹内側前頭前野の活動を高めるかどうかを機能的磁気共鳴画像法(fMRI)によって実験的に検証した。 調査の結果,情動調整を構成する「注意のコントロール」と「破局的思考の緩和」が対人場面に対する認知の歪み(判断バイアス)を媒介して社会不安に影響を及ぼしていることがわかった。したがって,情動刺激から中性的な刺激への注意の転換や,課題への集中といったことで示される注意のコントロール能力や,ネガティブな思考から距離をとることができる(認知的再評価)能力が高いと,対人場面におけるネガティブな出来事の可能性やコストの見積もりが低く,社会不安が弱いことが明らかにされた。 情動調整の1つである認知的再評価が腹内側前頭前野を活性化するかどうかをfMRIを用いて調べた実験では,自分のスピーチ映像をただ見る条件(統制条件)よりも,第3者になったつもりでみる条件(認知的再評価条件)において腹内側前頭前野が活性化する傾向が示された。したがって,認知的再評価を行いながらエクスポージャーを行うことによって,消去学習の効果が持続する可能性が示された。
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