Research Abstract |
本研究課題の目的である, 睡眠薬の減薬・離脱と集団療法における認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy ; 以下CBT)の効果を検証するため, 本年度は2つの探索的な研究を行った。 1つ目に, CBTによる睡眠薬の減薬・離脱効果の検証を行った。睡眠薬を服用中の不眠患者150名を対象にCBTを実施し, 睡眠薬を減薬・離脱した者の割合を算出した。対象者のうち123名(82.0%)は有意な不眠症状の改善が認められ, 治療終結に至った。このうち睡眠薬の量または飲む頻度に変化がなかった者が47名(38.2%), 睡眠薬の飲む量が減少した, もしくは睡眠薬を中止した者は76名(61,8%)であった。また, 睡眠薬の中止には至らなかったが治療前よりも50%以上の減楽に成功した者は25名(20.3%), 睡眠薬の中止に成功した者は51名(41.5%)であった。この結果から, CBTは睡眠薬の減薬・離脱に効果を持つことが示唆された。 2つ目に, 集団認知行動療法の開発と効果の検証を行った。広報誌やチラシの募集で集まった不眠の訴えを持つ24人を対象とし, 3ヶ月間で計5回の集団認知行動療法を実施した。実施した集団認知行動療法は計画段階のプログラムであったが, 対象者の睡眠の質に有意な向上が認められ, また入眠障害、中途覚醒の頻度の低下も認められた。この結果から, 集団認知行動療法は不眠症に効果を持つことが示唆された。 以上の研究は, 本研究課題の目的を遂行するために必要不可欠なものであった。また, これらの結果が良好なものであったことから, CBTは睡眠薬の減薬・離脱の効果を有し, 不眠症の集団療法にも有効であると考えられた。ただし, 本年度の研究は探索的なものであるため, これらから得られた課題を検討し, 来年度の研究では, より効果的なCBTのプログラムを立案するととが必要であると考えられた。
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