Research Abstract |
本研究課題の目的である,睡眠薬の減薬・離脱と集団療法における認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy;以下CBT)の効果を検証するため,本年度は2つの研究を行った。1つ目に,睡眠薬の減薬・離脱の妨げとなる要因の検討を行った.前年度の研究において,睡眠薬の減薬・離脱に焦点を当てたCBTは不眠症状の改善,および睡眠薬の減薬または離脱に有効であることを確認した.ただし,睡眠薬の減薬・離脱をより効率的に達成するためには治療内容の修正が必要であると考えられた.そこで本年度の研究では,睡眠薬の減薬・離脱の妨げとなる要因を明らかにすることを目的とし,CBTにより治療終結に至った者の背景,不眠症状の状態,服薬状況などの要因と睡眠薬の減薬・離脱の成否との関連を多変量ロジスティック回帰分析を用いて検討した.その結果,勤務状態とうつ症状の有無のオッズ比が有意であり,日常的な勤務があること,および治療開始時点にうつ症状が認められることは睡眠薬の減薬・離脱を妨げる可能性があることが示唆された.2つ目に,集団認知行動療法の治療プログラムの修正と検証を行った.前年度の研究において,集団認知行動療法は不眠症状に有効であることを確認した.ただし,治療効果に個人差が認められたことから,治療プログラムの修正が必要であると考えられた.そこで,本年度の研究では,前年度に実施した治療プログラムの修正を行い,改めて集団認知行動療法を実施した.実施した治療プログラムは,前年度の研究で得られた課題を踏まえ,睡眠薬使用に対する不安,日中の低い活動性への対策を付加し,プログラム構成におけるマインドフルネス認知療法の比重を高く設定した.不眠症状を主訴とする13名に対し6セッションの集団認知行動療法を実施したところ,不眠症状の改善が認められ,前年度と比較して集団凝集性の向上が確認された.
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