2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730495
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
李 正連 Nagoya University, 大学院・教育発達科学研究科, 准教授 (60447810)
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Keywords | 通俗教育 / 社会教育 / 大韓帝国末期 |
Research Abstract |
本研究の目的は、これまで韓国の社会教育研究において認識されてこなかった通俗教育に関する考察を通して、近代韓国における通俗教育の導入過程及びその実態を明らかにすることである。通俗教育は、明治20年代から1921年まで日本において行政用語として使われていたが、近代史における日韓の関係を考えれば、同時期に日本の通俗教育が韓国に導入された可能性も看過できない。韓国における通俗教育の導入やその実態を明らかにすることは、韓国の社会教育史だけではなく、日本の社会教育史をより多角的・総体的にとらえる上でも重要な作業と思われる。 以上のような研究目的を達成するために、平成20年度は日本の統監政治を受けていた大韓帝国末期(1906〜1910)における教育政策を検討し、通俗教育の導入過程及びその内実を明らかにしようとした。その一つの方法として、当時の『官報』(1902〜1909.6)を考察し、行政側での通俗教育のとらえ方やその内実について検討を行った。1907年12月13日の学部組織の改編により、初めて学部学務局の事務事項に通俗教育が登場するが、それは主として公立普通学校への入学督励のための教育として機能していたとみられる。当時は民衆の公立学校に対する不信が強く、就学率が低かったこともあり、就学勧誘のための親及び地方有志に対する教化活動が行われていたのである。さらに、1908年6月22日には、「学務委員規程準則」を制定し、学務委員を各普通学校に配置し、地域における入学督励活動をも行わせていた。このような教化活動は、1880年代後半から日清戦争直後までの日本における通俗教育の内実に酷似している。一方、『官報』などの行政文書において「社会教育」という用語は見当たらず、当時は日本と同じく行政用語としては「通俗教育」が使われていたとみられる。以上のことから、韓国の通俗教育は、日本から導入された可能性が高く、その内実も日本のそれと同様のものであったと思われる。
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Research Products
(2 results)