2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20740035
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川村 友美 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 准教授 (40348462)
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Keywords | ラスムッセン不変量 / 正または負の絡み目 / コバノフホモロジー / ベネカン型評価式 / 鏡像 |
Research Abstract |
ベリアコワとヴェルリが絡み目不変量として構成したラスムッセン不変量について,20年度までにベネカン型評価式を精密化した不等式が成立することを示し,その系として22年度まではある特殊な負の絡み目についてのみ決定公式を導き,23年度は一般の負の絡み目について不変量決定公式を得た.この議論は安部哲哉による等質絡み目のラスムッセン不変量の決定公式に類似したものである-結び目のラスムッセン不変量は鏡像について歪対称性が成立するが,絡み目の場合は自明な場合が反例となる-本年度得られた決定公式により,負の絡み目のラスムッセン不変量は正の絡み目と違って分離成分数(絡み目射影図の連結成分の最大値)が影響し,これが歪対称性を崩していることが明確になった. 実はこの結果を得る前にバードンが,ラスムッセン不変量の基盤であるリー版コバノブホモロジーの構成を少し変えて,鏡像について(歪)対称であるホモロジー不変量を新たに構成していた.当面は彼の結果の方が注目されると思われるが,本研究の価値を落とすわけではない.なぜならば彼とは別の視点で絡み目不変量の考察を与えており,鏡像についての歪対称性に固執しなかったおかげでこの不変量が一般の絡み目の複雑さの指標として重要であることが確認されたからである. なお,本研究期間開始前に予定していた接触幾何や特異点論と絡み目の各種不変量の精密化されたベネカン型評価式との直接の関連についての考察,前年度予想したオジュバットとサボーの結び目不変量についての同様の評価などについては,新たな成果を得るまでには至らなかった.しかし,本年度中にクロンハイマーとムロウカがゲージ理論によるコバノフホモロジー理論の再構築を発表したこともあり,今後も研究を継続していけば何らかの進展が期待できる.
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