Research Abstract |
本研究の目的は, 軌道体上の場の方程式の族に対する枠付き同境類不変量の定式化を行い, 3次元多様体の同境圏の構造を解明するための枠組みを確立することにある. 本研究では, 特に(1)w-不変量と交叉積を用いた3次元多様体の同境圏の構造の解析, (2)相互法則による符号数不足指数型不変量の組織的研究, (3)場の方程式の族の有限次元近似と枠付き同境類不変量の構成を目標とする. 2008年度における研究計画は, 上記の課題(1)を, (a)w-不変量と松本幸夫氏によるBounding genusの関係, (b)ホモロジー同境群と同境圏の関係, (c)グラフ多様体の同境圏におけるNeumann-Siebenmann不変量の振る舞いの解析という三つの側面から研究を行うものである. 前年度の研究で, (a)に関しては, 10/8-不等式のV-多様体版とw-不変量を援用することにより, Brieskornホモロジー球面の幾つかの無限系列のbounding genusを決定し, ホモロジー同境群におけるホモロジー球面の間の距離を議論することが可能になった. (b)に関しては, 次数付き可換環を対象とするある種の代数的な圏と, 3次元多様体の同境圏からの関手を構成した. 特に, グラフ多様体のホモロジー環の射から次数付き多元環を構成し, その非結合性が同境の存在の障害を与えることを証明した. (c)に関しては, (a), (b)の結果を踏まえ, 一般の3次元多様体の場合に, そのホモロジー環の間の代数的な射を用いてbounding genusを一般化し, 特にグラフ多様体の場合に, 一般化されたbounding genusに対して, Neumann-Siebenmann不変量と次数付き多元環の4重積による下からの評価を得た.
|