Research Abstract |
宇宙の重元素はビッグバンでは合成されず, 星の核反応で合成され, 星間空間に供給された. 従って, 宇宙の中で星とガスの大集団である銀河がいかに進化してきたか(宇宙の星形成史)を正確に把握することは, 重元素進化を理解する上で極めて根本的な問題である. 銀河の星形成率は, 原理的には大質量星からの紫外線によって測定するが, 重元素は星間空間では固体微粒子(ダスト)となって紫外線を吸収し, 赤外線で再放射するので, どちらか一方のみの観測からでは正確な星形成史を求めることはできない. 本研究は紫外線・赤外線を中心とし, 可視光, 近赤外線から電波に至る多波長観測を基にしてどのような銀河がどの程度宇宙の星形成・重元素合成に寄与してきたかを定量化し, これを再現する整合的な物理モデルを構築することが目標である. 本年度はまず, GALEX衛星(紫外線観測), Spitzer宇宙望遠鏡, およびAKARI衛星(赤外線観測)の観測データを用い, 銀河における星の紫外線の吸収と赤外線再放射を精密に測定し, それが銀河のどのような性質と結びついているかを徹底検証した. その結果, 赤外線は低温のダスト(遠赤外線を放射)だけではなく, 高温のダスト(中間赤外線を放射)からの寄与も大きく, 特に芳香族巨大分子からなる微小ダスト(PAHと呼ばれる)の放射が重要であることを確認した. これはモデル化に極めて重要である. また現象の現状で不定性の多い, 超新星爆発に起因する衝撃波によるダストの破壊を世界で初めて取り入れたダスト減光曲線モデルを構築した. これらの結果はすでに一部論文として出版した. また, 宇宙論的な構造形成と結びつけた統計的理論モデルを構築するための研究会を行った.
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