2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20740116
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
太田 一陽 The Institute of Physical and Chemical Research, 牧島宇宙放射線研究室, 基礎科学特別研究員 (20462666)
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Keywords | 可視光天文学 / 観測的宇宙論 / 高赤方偏移銀河 / 銀河形成 / 銀河進化 / 観測天文学 / 銀河団 / 撮像・分光 |
Research Abstract |
宇宙では星が形成されて集まり銀河となり、銀河が集まり銀河団となり、銀河がフィラメント状の形に群がり質量が高密度な領域と銀河が殆ど無い低密度な空洞から成る泡状の大規模構造を形成している。銀河団は、この大規模構造のフィラメント同士が交差する超高密度領域に形成される。宇宙誕生初期には質量の密度ゆらぎが存在し、高密度な領域では質量集積と星形成が速く進み、銀河の群れが合体・成長を繰り返して現在の宇宙に見られる大規模構造に進化したと観測から分ってきている。 本研究では逆に、宇宙の時間を遡り(=より遠くを観測し)ながら、銀河の空間分布、質量集積、星形成活動がどう変化してきたかを調べていき、宇宙の大規模構造と付随する銀河団、その構成銀河がどの様に形成されてきたか、その過程の解明を目指す。 平成20年度は、我々が発見した赤方偏移がz=6(宇宙年齢約9億年)の原始銀河団候補とその構成銀河の物理的性質を求め、後の時代(z<6)の原始銀河団とその構成銀河と比較し、これらの物理的性質が現(z=0、宇宙年齢約137億年)までにどう変化してきたかを調べた。その結果、この原始銀河団候補のサイズ(体積)は大きめであるが、質量と個数密度は後の時代の原始銀河団と似ていることが分かった。更に、この原始銀河団候補の質量は現在の宇宙に存在する銀河団の質量に匹敵することも確認した。これは宇宙の年齢が約9億年という非常に若い時点で、既に大規模構造の形成がかなりの段階まで進んでおり、銀河団の形成も始まっていた可能性が高いことを示す。また、この天体は銀河団の祖先であり、より小さい体積に質量を集積していきながら、現在の宇宙に見られる銀河団へと進化すると考えられる。今後の銀河団形成過程の解明につながる結果である。
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