2009 Fiscal Year Annual Research Report
非接触法によるナノチューブの伝導特性評価と磁場効果
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20740183
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大島 勇吾 The Institute of Physical and Chemical Research, 加藤分子物性研究室, 研究員 (10375107)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 磁気抵抗 / AB効果 / バリスティック伝導 / 非接触伝導 / 強磁場 |
Research Abstract |
本研究は、マイクロ波を用いた非接触の伝導評価法と強磁場を組み合わせる事により、これまで接触抵抗の問題で明らかでなかった単層カーボンナノチューブ本来の伝導特性とその磁場効果を明らかにすることを目的としている。この手法は、試料を空洞共振器に挿入した時の共振スペクトルの変化を観測することによって伝導度を評価できるため、接触抵抗などから生じる非本質的な効果を排除できると考えられる。初年度に開発した測定プローブを用いて高配向単層カーボンナノチューブ薄膜を磁場中で調べたところ、チューブ方向に磁場を印加したときにのみ、正の磁気抵抗に相当するスペクトルの顕著な変化が得られた。これは強磁場中で磁気抵抗が飽和するこれまでの四端子法の結果と異なる。また、その直径依存性を調べたところ、薄膜内のチューブ直径に応じて正の磁気抵抗が増大する事がわかった。これは観測された正の磁気抵抗が、アハロノフーボーム(AB)効果によるものであることを示唆している。一方で、密度勾配遠心分離法で得られた半導体チューブの高配向薄膜を、同じ条件下で測定すると、顕著な正の磁気抵抗は示さない。つまり、上述の正の磁気抵抗は金属チューブのAB効果によるものだと考えられ、このような金属チューブの本質的な磁気伝導特性の観測は世界で初めてである。本研究成果は米国物理学会の専門学術誌Physical Review Lettersに掲載された。 このように、非接触法は接触抵抗などによる外部要因を排除できるため、単層カーボンナノチューブの本質的な伝導特性を観測できる強力な手法である事がわかった。今後、金属チューブにおけるバリスティック伝導などの本質的な伝導特性の解明に期待がもてる。
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Research Products
(3 results)