2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20740187
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
柳瀬 陽一 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (70332575)
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Keywords | 空間反転対称性がない超伝導 / スピン三重項超伝導 / 層状ランダムネス / ルテニウム酸化物超伝導体 / 重い電子系 |
Research Abstract |
今年度は、「スピン三重項超伝導におけるランダムスピン軌道相互作用」について研究を行った。 スピン三重項超伝導体はベクトル型の秩序変数を持ち、それはdベクトルと呼ばれる。これまでに我々が構築したdベクトルに関する微視的理論の結果から、dベクトルの秩序構造が空間反転対称性の有無によって全く異なることが分かってきた。そのような研究の発展を背景として、本年度は特に層状欠陥を持つスピン三重項超伝導体を解析した。そして、それが空間反転対称性がある系とない系の両方の性質を併せ持ち、新しいタイプのdベクトルの構造を持つことを発見した。 具体的な研究対象として、Sr2RuO4-Sr3Ru2O7共晶系とCePt3Siの2つの超伝導体を考察した。これらはスピン三重項超伝導体であると考えられており、層状欠陥の存在が示唆されている。このような系において、2つの興味深い現象を示した。CePt3Siについては、乱れによる超伝導転移温度の増大が実験的に示されている。我々の理論解析により、この異常な振る舞いがランダムネスによるグローバルな空間反転対称性の回復によるものであることが分かった。また、Sr2RuO4-Sr3Ru2O7共晶系において、バルクのSr2RuO4で実現しているカイラル超伝導状態とは異なるヘリカル超伝導状態が安定となることを示した。このことからSr2RuO4-Sr3Ru2O7共晶系では近年話題となっているトポロジカル超伝導が実現していると考えられる。そのことから期待される新しい超伝導現象について議論した。
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