Research Abstract |
室内実験と野外観測の両方から,火山爆発に伴う空気振動の波形の持つ情報を解読することを試みている.室内実験は,研究協力者V. Vidal(フランス)を招聘し,非ニュートン性流体中の連続的な気泡の上昇・破裂に伴う音波生成の物理機構を調べた.ある現象の時間間隔,様式,前兆信号,そしてそれらを支配する記憶効果や前のイベントから次のイベントへのフィードバック現象を解明することは,地球科学の最重要課題の1つであるが,この実験では,この問題と物理的相似性の強い現象を見出した.それは,気泡の破裂に伴う圧力波の波形と破裂前に発生する前駆的音波に明瞭な相関関係があり,両者の特徴が準周期的に変動する,というものである.物性試験や,データ解析の結果,その原因が,繰り返し破裂する気泡が流体内部に残していく履歴の蓄積にあり,その蓄積過程に,流体自体の持つ記憶効果と,液面近くに溜まっていく残留気泡の影響であると結論付けた.現在,この結果を論文にまとめているところで,今年度前半中に投稿予定である.野外観測では,既存の火山空振観測システムよりも,高い時間分解能で空気振動を計測するためのシステムを開発している.使用するセンサーは,既存の火山観測システムで使用されているものよりも性能は高いが,野外での長期運用の実績はない.そこで,平成20年8月より,浅間火山火口東観測点で耐候性等の試験を行った.4ヶ月間順調に動作していたが,平成21年1月末に不調が発生した.平成21年5月に回収し、原因を調べたところ、風のノイズを低減する目的で使用したパイプに雪や氷がつまり、音響特性が変化したことが一番の原因であることがわかり、設置方法を変更して6月より観測を再開した。不調ではあったものの,平成21年2月に発生した,浅間火山の噴火では,噴火微動と連動した空気振動が計測され,両者の相互相関を計算することで,微笑噴火の発生を正確に検知できることがわかった.計測された波の発生源については,平成21年度の観測データを含めて解析を進めた.その成果を、日本地球惑星科学連合2010年大会において発表する予定である.
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