2010 Fiscal Year Annual Research Report
非弾性減衰構造の推定手法の構築と東北日本・北部伊豆小笠原弧の地下不均質構造の解明
Project/Area Number |
20740261
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 努 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 研究員 (90435842)
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Keywords | 非弾性減衰 / 地震波散乱 / 主成分分析 |
Research Abstract |
本研究課題は,S波最大振幅に対する多重前方散乱による減衰を補正し,1Hz以上の高周波数帯域における非弾性減衰の三次元構造を解明することを目標とする.計画最終年度の本年度は構造推定手法の改良を進め,東北日本弧および北部伊豆小笠原弧の減衰構造を解明した.また非弾性減衰やランダム速度不均質構造などを総合した地下構造の解釈を進めた. 昨年度までの成果を学会で報告した際,より安定して解を推定できる手法として交換モンテカルロ法(Hukushima & Nemoto 1996)の提案を受けた.この手法の妥当性を検証した結果,遺伝的アルゴリズムに基づいた従来の手法に比べ,減衰構造だけではなく震源やサイト特性もより高い精度で推定できることがわかった.その手法を自然地震の波形記録に適用した結果,東北日本弧では第四紀火山下と日高西部の本州弧とクリル弧の衝突帯付近で減衰が強いことが明らかになった.また北部伊豆小笠原弧では,八丈島付近と青ヶ島から須美寿島の第四紀火山下で減衰が強いことがわかった. 本研究で減衰構造が解明されたことで,地下の構造を特徴付けるパラメータはP波及びS波の地震波速度,ランダム速度不均質,非弾性減衰となった.ランダム速度不均質と非弾性減衰はそれぞれ二つのパラメータで記述されており,計6個の物理量で地下構造が記述される.これらのパラメータの間の相関係数は,ほとんどが0.2以下であった.地下構造の特徴を効率よく抽出するため,主成分分析による次元圧縮を行った結果,層構造に対応する成分,火山分布と関連した高温領域を反映していると考えられる成分,流体分布や亀裂分布を反映していると考えられる成分などが抽出された.一般に非火山地域の高減衰域や高散乱域の解釈は困難となる場合が多いが,統計的手法に基づいたこの手法は構造を客観的に解釈する上で重要な情報となると考えられる.
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