2009 Fiscal Year Annual Research Report
真空紫外光イオン化検出振動分光法開拓による水素結合ネットワーク構造の研究
Project/Area Number |
20750002
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松田 欣之 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 助教 (70400223)
|
Keywords | 赤外分光 / 真空紫外光 / 一光子イオン化 / クラスター / イオン化ダイナミクス / プロトン移動 / 分子間相互作用 / プロトンマイグレーション |
Research Abstract |
研究代表者らの開発した真空紫外光イオン化検出赤外分光法は、真空紫外光と赤外光の入射時間を変えることにより、中性クラスターとクラスター正イオンのサイズ選別赤外分光がそれぞれ可能になる。中性クラスターは光イオン化過程における前駆体、クラスター正イオンは生成物である。よって光イオン化前後のクラスターについて、赤外分光による構造解析研究が可能であり、本手法はクラスターの光イオン化ダイナミクス研究に非常に有効である。それにより、酢酸の二量体と溶媒和クラスター、アセトンの水和クラスターの光イオン化過程における異性化反応の研究を展開し、それらの光イオン化ダイナミクスを明らかにした。 酢酸二量体および酢酸の溶媒和クラスターの赤外分光研究により、光イオン化によって誘起される親水基間のプロトン移動反応が、親水基間の相対プロトン親和力に依存することを明らかにした。 アセトン-水クラスターの光イオン化過程において、アセトン正イオンがケト-エノール互変異性化することがわかった。さらにアセトン-重水クラスターの赤外分光により、アセトン正イオンの互変異性化において、水分子がアセトン正イオンのメチル基のプロトンを引き抜きカルボニル基へ長距離移動させるという触媒作用していることを見いだした。この水分子の触媒作用は、プロトンを溶質分子から引き抜き移動させるというcatch & release型の作用であり、実験的に分子レベルで実証されたはじめての結果である。
|