2008 Fiscal Year Annual Research Report
三配位カーバイド配位子をもつ遷移金属錯体の合成と構造および反応性
Project/Area Number |
20750050
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
竹本 真 Osaka Prefecture University, 理学系研究科, 講師 (20347511)
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Keywords | カーバイド錯体 / フィッシャートロプシュ反応 / 金属一炭素多重結合 / カルベン錯体 / アルキリジン錯体 / イミド錯体 / クラスター錯体 |
Research Abstract |
天然ガスや石炭をクリーンな液体炭化水素に変換する反応として知られるフィッシャー・トロプシュ反応は、工業的に重要であり、古くからその反応機構に興味が持たれてきた。触媒表面上に発生したメチレンの重合によって炭素一炭素結合形成が進行すると考えられてきたが、近年の計算化学的研究により、カーバイドおよびメチリジンを経由した、より活性化障壁の低い炭素一炭素結合形成過程の存在が示された。このため、触媒表面におけるカーバイド種のモデルとしての遷移金属カーバイド錯体の合成と反応性は興味深い課題である。本研究では、sp^2混成をとった三配位のカーバイド配位子を有する新規な遷移金属錯体の合成と、その構造および反応性の解明を行った。具体的には、メチレン配位子を有するルテニウムー白金異種3核クラスター錯体のC-H結合切断を経る異性化反応により、三配位のカーバイド配位子を有する新規なRu2Ptカーバイド錯体が生成することを見出した。X線構造解析の結果、カーバイド配位子は、sp2炭素に特徴的な三方平面型構造をとっていることが分かった。また、電子状態計算の結果、Ru-C-Ru間には多重結合性が存在し、その部分構造はジアミノカルベン型有機配位子と類似していることが判明した。三配位カーバイド炭素の化学反応性についても検討した結果、隣接する金属に結合したヒドリドやメチル配位子との結合形成が、COなどの外部配位子の配位により誘起されることを見出した。これは、フィッシャー・トロプシュ反応において金属表面に生成したカーバイド種の反応性に対して新たな洞察を与える実験結果として興味深いものである。
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Research Products
(2 results)